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第19回 坊っちゃん文学賞

【坊っちゃん文学賞特別対談】田丸雅智さん+白濱亜嵐さん「どんなに泥臭くても届けないことにはじまらない」

第19回坊っちゃん文学賞の審査員長 田丸雅智氏とアンバサダー白濱亜嵐氏が、一昨年、昨年に続いて3回目の対談を実施。松山市出身でそれぞれの分野で大きくご活躍するお二人には、「プロデビュー後のターニングポイント」をテーマにお話しいただきました。そして、対談後半では、坊っちゃん文学賞大賞受賞者による新作を公開し、その感想を語り合います。

*本対談は、Zoomを使用してオンラインで実施しています。

坊っちゃん文学賞事務局(以下 事務局):今年の対談のテーマはまず、「プロデビュー後のターニングポイント」でお願いいたします。昨年、坊っちゃん文学賞受賞者によるショートショート集『夢三十夜』が発売となり、たくさんの受賞者がプロデビューを果たしたので、その後の参考になるお話もお伺いできればと思います。

白濱:僕はアーティストなので、ターニングポイントだったのはやっぱり、五大ドームツアーを実現できたこととNHKの紅白歌合戦に出場できたことですね。アーティストって良くも悪くも肩書きが色々ついて回るので、「ドームアーティスト」と「紅白アーティスト」という肩書きがついたのは、すごく大きなターニングポイントでした。もちろん過程でしかないですけど、アーティストなら誰でも目指す夢だと思います。

田丸:すごいスケールですね。

白濱:それまでが長かったですけどね。GENERATIONSは、デビューして二年間は自分達のライブツアーができなかったんです。ファンが少なかったので、ライブのチケットが売れないので。その後、ホールのライブツアーからはじまって、翌年にアリーナツアーをやって、という流れでした。

田丸:ライブができない時代なんて、いまのみなさんから考えると信じられないですね。

白濱:ライブは人気ももちろん必要ですけど、曲数も必要なんです。ホールツアーだと、ライブも1時間半程で20曲前後あれば十分なんですけど、アリーナツアーやドームツアーとなると、2時間、3時間と伸びていくので、たくさんの曲がないとできないわけです。

田丸:そういう事情もあったんですね。デビュー当時はどんなことを考えていたんですか?

白濱:本当にがむしゃらでした。いまでこそ、自分達で作った曲をグループの曲として採用することができるんですけど、当時は、プロデューサーのHIROさんが出してくれる方向性に沿って、いわば、曲が降りてくる、という感じでした。その一方で、ライブは初期の頃から、自分達発信で作らせてもらっていた気がします。

田丸:それで、ちょっとずつ会場のキャパシティが大きくなっていって……。

白濱:2年目のアリーナツアーが終わった後に「次はドームに行くから」って告げられたのを覚えています。ただ、ドームツアーが決まった当時も、本当はまだドームツアーができるレベルかどうかわからない、って言われていたんですよ。でも、チャレンジしてみたいという事務所の意向もあって、思い切って挑戦したんですね。

田丸:白濱さんご自身はどういう心境でした?

白濱:お客さんがちゃんと入るかどうかもわからないままやるっていう苦しさや不安がありました。あとはやっぱり先輩の影があって、EXILEや三代目J SOUL BROTHERSに続いてドームツアーをやらなきゃいけないというプレッシャーや使命感はありました。結果的に、ドームツアーは大成功したので、終わった後には苦しみ以上のものが得られましたし、その挑戦がいまに繋がっていると思います。

田丸:紅白も同じくらいの時期ですか?

白濱:その翌年くらいですね。ドームの実績があったかもしれないですし、世間的な認知度の影響もあったかもしれません。実はその前年、行けるかも、と思っていた年に選ばれなくて……すごい悔しくて、翌年もっと頑張ろうということで、NHKの色々な番組に積極的に出演したり、押す楽曲もみんなで話しながら決めていったりもして。そういう努力を重ねて、ようやく念願が叶いました。

田丸:すごくシンパシーを感じます。作り手としてやっていくとき、もちろん場合によっては受け身であることも必要だと思いますけど、受け身だけでは切り開いていけないんですよね。不安や恐怖もたくさんあるんですけど、自分のことを見つけてもらう、知ってもらうために、どんなに泥臭くても、届けないことにははじまらない。なので、白濱さんのようにものすごく努力をされて、いい意味で戦略を立てて、なりたい姿に向かって実行していくという姿勢には本当に共感しかありません。

白濱:やっぱり簡単な世界ではないですからね。最近もそうです。LDHって、僕が入った時はまだそこまで大きくはなかったんですけど、いまや大きな芸能事務所に成長したことによって、「LDHっぽい」と大きく括られてしまうようになっている気がしているんです。その結果、自分達の楽曲が、届きやすくなっている一方で、届きにくくなっている面もあるかもしれないなって。何を出しても「LDH」という看板が付いて回るので、僕としては、その壁を乗り越えていかなきゃなって考えています。僕自身は食わず嫌いされてほしくないからまずは自分が食わず嫌いをせずにいろいろな音楽を聴くようにしていて、すべての音楽を肯定し、それをインプットして、自分の音楽に生かすようにしています。

田丸:いやあ、さすがです。僕の話で言いますと、ショートショート集に1作品だけ掲載してもらったプロデビューの後はなかなか次につながらなかったんですね。当時の出版業界では、ショートショートの単著は売れないという評価だったので。その頃は単著につながり得るショートショートの大きな文学賞も無かったですし、ショートショートのプロとしてやっていく方法なんて誰も知らなかった。そこで僕は、とにかく少しでも編集者の方とつながりができるとお会いできないかと半ば強引に押しかけたり、出版関係の集まりにどうにかこうにか混ぜてもらうということを地道に繰り返していました。

白濱:へえ。

田丸:色々なことを言われましたけどね……ちょっと打ち解けた会話ができたと思った相手から、「ショートショートだけを書いているうちは作家として半人前だよ」と耳打ちされたことも(笑)。似たようなことはたくさんありました。でも、やっぱりショートショートが好きでしたし可能性も感じていたので、すごく悔しくて落ち込みましたけど、やめることはしませんでした。常に自分の作品を印刷して持ち歩いて、ちょっとでも次につながりそうな人や、友人知人にまで一方的に配ったりもしていました。

白濱:すごい!

田丸:そのなかでたまたま、ある作家さんに出会って、高く評価していただいたんです。お渡しした作品だけでなく、ネット掲載していたものまで読んでくださったそうで、とても励まされました。そして、さらにその一ヶ月後くらいに、急にその方からメールをいただいて、「田丸さんの作品は世に出てほしいので、出版社に出版をとりつけてきました。勝手なことをしてすみません」と。あまりのことに、僕は最初意味がわからなくて(笑)。

白濱:そんなことがあるんですね。

田丸:頭が真っ白になりましたし、理解が追いついた瞬間には部屋で叫びましたね(笑)。そして、その作家さんにご紹介いただいた出版芸術社という出版社の方たちとも意気投合して、そこからは順調に出版に至って。それが『夢巻』という本でした。でも、そのときもやっぱり怖くて。作家って、デビュー作が売れなかったら、2冊目を出すのはなかなか難しくなるんですね。

白濱:一発目で決まるっていう……そこはアーティストとは違いますね。

田丸:ええ。しかも、当時はショートショートは売れないと言われていたので、いったいどうなるんだろうと。そんな不安だったときに、また大きな出会いがありました。ひとつが八重洲ブックセンターの書店員さんとの出会いで、「田丸さんの作品を推します」とすごく応援してくださって。その結果、週間売上ランキングの上位に入ることができたんです。さらにその書店員さんが、当時三省堂で働いていたカリスマ書店員の新井見枝香さんに『夢巻』を紹介してくださって。そうしたら新井さんもすぐに読んで、応援してくださったんです。それをきっかけに、たくさんの業界の人が読んでくれるようになりました。

白濱:つながっていきますね。

田丸:あと二つあって……一つが、朝日新聞の全国版で大きく紹介していただいたこと。そして、もう一つが、又吉直樹さんに取り上げていただいたことです。又吉さんは、僕がもともとファンだったので、ファンレターとともに『夢巻』をお送りさせていただいたんです。そうしたら、読んで気に入ってくださって、テレビや雑誌で紹介してくれたんです。そんなありがたいお話が複合的にあったおかげで、『夢巻』はショートショートとしては比較的よく売れました。すると、そこから数か月の間に、10社くらいから出版のオファーが届いて……いまに至るという流れですね。

白濱:すごいな。

田丸:やっぱり作品を書くだけではなくて、自分の足で動くのも大切だと実感します。

白濱:すごくよくわかります。自分の手と頭で作品を生む作家さんと違って、音楽業界のプロデューサーのなかには、自分で手は動かさずに、「こういうイメージで曲を作ってほしい」と発注する人もいます。それはそれで一つのやり方だとは思うんですけど、僕はあくまでクリエイティブなディレクターでいたい。現場主義というか、自分の考えたメロディを自分でパソコンに打ち込んで曲を生みたいんです。そこは最近とくに強く心がけています。

田丸:すごく共感します。僕もやっぱり現場が大好きなので。作品の話ではないですが、ぼくがやっている書き方講座も教える人を育成して自分はマネジメントするという形にしようと思えばできますし、実際にそういう感じのお話をいただくこともなくはないんですけど、僕は自分で現場に行きたいし、それで見えてくるものも大きいんじゃないかなとも思っています。

白濱:僕の場合だと、曲の自主制作を絶対に続けなきゃいけないと思っていて。やっぱりプロになるとタスクリストに追われがちなんですけど、そればかりをこなす作業になると、自分のアイデアや曲を作るスキルが凝り固まっていきますし、ルーティーン化されてしまいます。そうなると、時代に置いていかれてしまう。そうならないためには、何の制約もない、自分のやりたいことができる自主制作を続けることが大切だと考えていますね。

田丸:面白いですね。ちなみに白濱さんにお聞きしてみたいんですけど、ショートショートでも音楽でも、「次」の作品を作らなければいけないですよね。坊っちゃん文学賞でも受賞は通過点ですが、一つの到達点でもあります。だけど、そこに悪い意味でこだわりすぎていると、その先がなかなか難しくなる。別の言い方をすると、どんなにヒット作を出したとしても、作り手であり続ける以上は次もそのまた次も作り続けないといけない。そのときに、白濱さんは、過去の作品と次の作品の関係について、どのような感覚でとらえていらっしゃいますか?

白濱:僕の場合、過去の作品と比較するという感覚はあまり持っていません。楽曲によってそれぞれ色が違うので、それぞれの色が鮮やかに描けたらなって思っています。

田丸:素敵な考え方ですね。もうひとつ、「出し切る」という感覚はどうですか? 作家だと「あの作品ですべて書き切った」という話はたまに聞くことがあって、僕自身も「海酒」という作品を書いたときに、結果としてはそうなりませんでしたが、一瞬だけそれに近い感覚になりかけた経験がありまして。

白濱:僕は、出し切った作品というのは一つも無いかもしれないです。もちろん、提出期限の範囲内でいつも最大限ベストを尽くすんですけど、期限が伸びれば伸びるほど、さらに伸ばせるというか、もっととことん突き詰められるんじゃないかって感じています。なので、本当にやり切ったと感じる作品を作るためには、提出期限を自分が死ぬ日に設定してもらわないといけないかもしれません(笑)。

田丸:死ぬまでがゴールというと、ある意味終わりがないので酷ではありますけど、それはそれで本質的かもしれませんね。

白濱:そうですね。

田丸:じゃあそろそろ、受賞者の方の新作についてのお話をしましょうか。今回、過去の坊っちゃん文学賞の受賞者の方に新作ショートショートを書いていただいて、学研プラスさんから電子書籍を出すことになりました。発売は少し先の予定ですが、特別に大賞受賞者の作品を一足先に全文公開できることになりました。白濱さんと感想を語り合えればと思います!

「その声は、」高野ユタ(第16回坊っちゃん文学賞大賞受賞者) *タイトルクリックで全文お読みいただけます。

白濱:僕は、文系で国語が得意だったんですけど、ちょっとだけ苦手に感じたのが、「山月記」のあたりだったんです。ちょっと難しくなるじゃないですか。そのときのことを思い出して、この作品を読んだ後に、「山月記」を読み返してみたんです。そうしたら、すごく広がりが見えたというか、理解が深まった気がしました。

田丸:誰もが知る「山月記」を意外なかたちにアレンジした作品でしたね。

白濱:ちょっと切ないところもよかったですし、「山月記」を知っているからこそ、「あ、そういうことだったんだ」って思える作品だったような気がします。あと、テレビのホラー番組で、本当にあった怖い話の間に挟まれる、感動する系ホラーを観た時のような読後感がありました。僕はホラーが好きなので、より面白く読めたかもしれません。

田丸:僕もまず、「山月記」をユーモラスに料理しているのがいいなと思いました。「その声は」というセリフもかなり滑稽で。でも、そんなちょっと可愛らしい残念さがあって微笑ましいなと思っていると、途中からちょっとずつ、おや? と変わっていって……その転調がとても上手かったですし、結末が分かっても何度も読み返したくなるような一作でした。

白濱:僕も読み直したら、一回目では気がつかなかったディテイルに気がついて。そこも秀逸だと思いました。

「帯電体質の解決法」高野ユタ(第16回坊っちゃん文学賞大賞受賞者)*タイトルクリックで全文がお読みいただけます。

田丸:高野さんの二作目は、プラス思考とマイナス思考が静電気に関係しているのでは、という仮説にたどり着いた主人公のお話です。アイデアが素晴らしいですし、描きっぷりにもユーモアが滲み出ています。そして、最初のほうでさりげなく、でも、しっかりとお話世界の設定の辻褄が合うように読み手の懸念点を潰しているところもお見事ですね。そうか、ゴムアレルギーだからゴム手袋は使えないなって納得してしまいますし、主人公がいろいろな変な仮説にたどり着いても、この人だったらさもありなん、と腑に落ちてしまうという。あり得ない方向への誘導の仕方がすごく面白かったポイントですね。

白濱:不思議な作品でした。田丸さんもおっしゃる通り、発想がすごいです。よくこんなこと思いつきますよね。先ほどの作品もそうでしたけど、アイデアが秀逸。しかも、どんどん先が読みたくなるような書き方をしていて素晴らしいなって感じました。

「お弁当」山猫軒従業員・黒猫(第17回坊っちゃん文学賞大賞受賞者)*タイトルクリックで全文がお読みいただけます。

「努力の結晶」山猫軒従業員・黒猫(第17回坊っちゃん文学賞大賞受賞者)*タイトルクリックで全文がお読みいただけます。

田丸:これは二作とも世界設定が一緒で、登場人物が重なっている部分もあるのでまとめてご紹介しましょう。

白濱:あ、本当だ。はじまりは両方ともホームルームからですね。そして、どちらも先生のエピソードで終わる。

田丸:そうなんです。それで、まず「お弁当」のほうに出てくるのが、海の幸弁当。よくあるお弁当の名前ですけど、この作品では、本当に食材をお弁当から釣るという(笑)。

白濱:(笑)。僕は書いたことがないからわかんないですけど、自分だったらきっと、マグロが釣れたときにお弁当の形どうなってるんだろうと悩んで書くのをやめちゃう気がするんです。そこを大胆に攻めているのがすごい。現実っぽい世界とがっつりフィクションの世界が交わって不思議な世界観を生んでいますよね。

田丸:そうですね。あと、登場人物は中高生くらいですけど、その設定がすごく上手に使われていると思いました。たとえば、最初に海の幸弁当を早弁する場面。この世界の早弁っていうのは海の幸を釣るってことなんですけど、授業中に生徒がこっそり釣り糸を垂らしているときに、先生は注意するのではなく、ちょっと応援する(笑)。でも、釣り上げたら授業中だからリリースしなさい、って(笑)。そういう感じがすごく爽やかで健やかで、青春って感じがしましたね。

白濱:ちなみに、僕だったら、山の幸弁当を選ぶなって思いました(笑)。

田丸:(笑)。あとは、冒頭お話しした通り、登場人物がおそらく重なっていて、武田くんは二作とも出てくるですよね。「お弁当」の方の武田くんは、何も釣れないから、重箱の隅をつつくようにアサリやシジミを取っていた、というちょっと可愛らしいキャラクターで、「努力の結晶」の武田くんは、小瓶を割ろうとして先生に怒られていたという(笑)。

白濱:これだけで武田くんのキャラクターが見えますね。

田丸:そうなんです。実はショートショートってキャラクターを立たせながら描くのが簡単ではないんですよね。なぜかというと、キャラクターによって肝心のアイデアが霞んでしまう可能性があるから。ですが、この作品はアイデアとキャラクターがしっかりと両立できていて、お見事だと思います。

白濱:しかも、「努力の結晶」では、武田くんのエピソードを一行で収めていて。

田丸:無くても成り立つのに、一行か二行、ちょっとした遊び心を入れることで、より作品世界が豊かになります。色々なクラスメイトが出てくる作品をぜひシリーズで読んでみたいですね。そして、受賞作の「ドリームダイバー」もそうでしたけど、黒猫さんの作品にはメッセージ性がありますね。しかも、ともすれば説教臭くなりそうなところを、説教臭くならない寸前で踏みとどまって面白く書いている。これは一貫して上手いなと思います。

「人喰い沼の水 全部抜く」椿あやか(第18回坊っちゃん文学賞大賞受賞者)*タイトルクリックで全文がお読みいただけます。

白濱:これはすごい作品でしたね。オカルトっぽさも入っていて。

田丸:やばいですよね(笑)。僕はすごく好きで傑作だと思います。

白濱:作品に出てくるおもちゃの刀はきっと、鬼滅で流行ってたんだろうなって思いました。池の水を抜くテレビ番組も実際にありますよね。

田丸:流行り物や時代を象徴するモチーフを借りてくると、そこに依存しちゃいがちになるんですけど、椿さんはそのあたりのバランスが絶妙です。元ネタを知らない人が読んでも受け入れられるというか。

白濱:たしかにそうですよね。

田丸:そして、池の水を抜く、を人喰い沼でやるというのはすごいアイデアですし、展開も大胆ですよね。「なんでやねん!」の度合いが絶妙で、もういいや、受け入れよう、と(笑)。

白濱:めっちゃわかります。

「狸穴桜」椿あやか(第18回坊っちゃん文学賞大賞受賞者)*タイトルクリックで全文がお読みいただけます。

田丸:一転して怪奇幻想の色が強い作品でした。すごく切なくて美しい。

白濱:ちょっと霞んだ、フィルターがかかって、キラキラ、ホワホワしているような世界でしたね。

田丸:2,000文字程度でこれだけ深遠な世界を描けるのはすごいです。そして、この二作品も世界設定が同じなんですよね。「人喰い沼の水 全部抜く」とうっすらリンクしていて、首無し大仏が出てきます。ぜひシリーズで読んでみたいですね。

白濱:たしかに。あと、狸って色々な逸話がありますよね。葉っぱを頭に乗せて人間に化けるとか、ジブリの「平成狸合戦ぽんぽこ」も狸が主人公になっていたり。狸が日本人にとって身近な存在だからこそ、お話の奥深さや面白味が出ていると思いました。

田丸:これが狐だとかなりイメージが変わるでしょうね。狸のちょっとしたかわいさ、愛くるしさみたいなところも作品に影響しているかもしれませんね。

白濱:狸だからこそ温かい感じがするというか。

田丸:そして、桜もですね。この日本的なモチーフがうまく昇華されている作品でした。

事務局:では、そろそろお時間になりますので、最後に、坊っちゃん文学賞に応募者の方々に向けてお二人からメッセージをお願いできますでしょうか。

白濱:今年度も自分が関われていることを嬉しく感じています。坊っちゃん文学賞は本当に誰にでもチャンスがある賞です。そして、自分でものごとを生むって素晴らしいことです。自分がこれまで感じてきた世界、自分にしか見えていない、感じ取れていない素晴らしいものが、それぞれの人の中に絶対にあるので、みなさんがお母さんのお腹から生まれていまに至るまでに得たもの、感じてきたものを作品に落とし込んで応募してほしいです。受賞したら、作品が本に収録されるチャンスや新作を発表する機会に恵まれる可能性もあるので、ぜひ、躊躇せず、あなたの物語を聞かせてほしい、読ませてほしいです。

田丸:白濱さんのおっしゃる通り、本当に開けた文学賞なのでどなたでも応募してほしいです。プロを目指したいという方から、趣味としてやってみようという方、あるいは、まったく興味がなかったんだけどなんとなく目に飛び込んできたから挑戦してみよう、という方まで、きっかけはなんでもありです。一歩踏み出した先にさまざまな豊かな世界が待っています。ショートショートの執筆に取り組んでみると想像できる範囲というのはどんどん広がっていきますし、やればやるほど自由になっていきます。自分が囚われていた常識やルール、足枷に気がついて、それを外したり、作り直したりという作業も楽しいです。それらすべてが「生み出していく」ということなので、とにかく、躊躇せずに、楽しみながら、自分のやり方、スタイル、考え方、感じ方で気軽に挑戦してほしいです。

事務局:ありがとうございました。

(2022.8.17 Zoomにて)

田丸 雅智

1987年、愛媛県松山市生まれ。松山東高、東京大学工学部、同大学院工学系研究科卒。現代ショートショートの旗手として執筆活動に加え、坊っちゃん文学賞などにおいて審査員長を務める。また、全国各地で創作講座を開催するなど幅広く活動している。ショートショートの書き方講座の内容は、2020年度から小学4年生の国語教科書(教育出版)に採用。17年には400字作品の投稿サイト「ショートショートガーデン」を立ち上げ、さらなる普及に努めている。著書に『海色の壜』『おとぎカンパニー』など多数。メディア出演に情熱大陸、SWITCHインタビュー達人達など多数。 <田丸雅智 公式サイト>


白濱 亜嵐

1993年8月4日生まれ、愛媛県松山市出身。 2012年11月、GENERATIONS from EXILE TRIBE パフォーマーとしてメジャーデビュー。 2014年4月にEXILE新パフォーマーに決定し、EXILEに加入。GENERATIONSのリーダーも務め、EXILE/PKCZ®と兼任しながら活動している。 また、俳優としての主な出演作にはドラマ「シュガーレス」、「GTO」、「小説王」、「M 愛すべき人がいて」、 映画「ひるなかの流星」、「コンフィデンスマンJP プリンセス編」、「10万分の1」などにも出演。 さらにDJ(楽曲制作)としても活動し、マルチに活動の場を拡げている。


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