


*本対談は、Google meetを使用してオンラインで実施しました。
前年度の応募数が9,900作品と過去最多応募数を更新し、今や「文学の登竜門」として圧倒的な勢いを見せる「坊っちゃん文学賞」。
毎年恒例となったショートショート作家で本文学賞の審査員長である田丸雅智さんと、アンバサダーを務める白濱亜嵐さんによる特別対談の今年のテーマは、「AI時代における創作と創造力」。
AIの利用が当たり前となった現在は、こと創作を行う方々にとって混迷期と言えるかもしれません。
そんなAI時代の真っ只中において、私たちはなぜ自らの手で言葉を紡ぐのか…。
AIに代表される昨今の技術革新や、文体に現れる人の本質まで、お二人に深く語り合っていただきました。
田丸さん: 2026年は、文学界にとってまさに「AI元年」と呼ぶべき時代になりました。
誰でも手軽に物語を生成できるようになった一方で、公募を伴う文学賞の現場では「所謂それっぽい」作品が激増しているとも聞きます。
音楽の世界で最前線を走る(白濱)亜嵐さんは、この状況をどう見ていますか?
白濱さん: 本当に、AIはもう当たり前の存在になりましたよね。AIを僕はあくまで便利な「ツール」として捉えています。日常では検索アシスタントのように使いますし、公式コメントを出す際も「この言い回しは変じゃないかな?」と、AIに客観的に確認してもらうことも多いです。
田丸さん: なるほど、校正やリサーチの頼れる相棒ということですね。楽曲制作という深いクリエイティブの領域ではいかがでしょう?
白濱さん:
AIに対してアレルギーを持たれている方も多いと思いますが、音楽はそもそも最初は楽譜から始まって、その後シンセサイザーが登場したり、パソコンで作れるようになったりと、技術の進歩がクリエイティブの可能性を切り開いてきた部分も大いにあると思っています。なので、僕は極めてポジティブな「道具」として捉えています。
例えば、どうしても見つからない理想のドラムの質感やパーカッションの素材をAIで生成するとか。僕の音楽制作におけるAI活用は、足りないパーツを3Dプリンターで作るような感覚なんです。
でも、最初から最後までAIに作らせた曲を「自分の作品」として出すのは、個人的にはクリエイティブではないと思っています。
田丸さん:
「3Dプリンター」とは、おもしろい例えですね!
AIは小説の世界でも賛否両論ありますけど、僕も工学部だったこともあってか、テクノロジーに否定的なところはあまりなくって。
僕もAIは、効率化を助ける「電卓」や「エクセル」に近いイメージです。
ただ僕も亜嵐さんと同じで、AIを創作に100%使うことは絶対にない。それは自分がなぜ創作をしているのかという「書く原動力」、根源的な話にもなってくるので、個人的にはそこは違うだろうなと思っています。あくまで、自分自身の創作に限った話ですが。
白濱さん: AIが作る文学作品についてはどう感じていますか?
田丸さん:
正直なところ、今のAIは平均的な文学作品しか書けていないように感じます。
ただ、平均値=最低限はクリアをしているので、文学賞の一次審査は余裕で突破するレベルには達していると思います。
初めて創作をした方が手探りで書き上げた作品よりも、それっぽい作品をAIは書き出せるので、その点でAIの進化は目覚ましいと感じていますね。もちろん、その先を求められるのが文学賞だと思っていますが。
音楽の分野ではいかがですか?
白濱さん:
実は、AI生成された音って、学習元がYouTubeなどの配信音源であるためか、どうしても音が圧縮されて潰れてしまっていて、高音域が「シャリシャリ」とノイズがかった独特の音質劣化があるんですよ。
だから、100%AIで作られた曲は、「あ、これAIだな」ってプロが聴けばすぐに分かるんです。
田丸さん:
先ほどAIが作る文学作品について語りましたが、誰かに代わりに書いてもらうという話は、正直昔からあった事なんじゃないかなとは思っています。例えば、ベテラン作家が弟子にゴーストライターのようなことをさせていたという話もありますよね。
そういう意味では、人間が人間に書いてもらっていたのを、AIに書いてもらう形に置き換えただけで、構造としてはそこまで違いはないのではと思う部分もなくはないです。
ちなみに、僕は先日出した『ショートショート未来図』という本の中で、AIベストセラー作家と、そのAI作家を担当する人間の編集者にまつわる「AI文芸編集者」という物語を書いたのですが、AIだから一概にダメというのではなく、これによって出版業界が拡大する可能性も踏まえながらしっかり向き合っていくのがよいのかなと思っています。創作面でも、AIに書いてもらった作品を編集したりプロデュースしたりする創作の在り方も十分にあると思っています。
ただ、いち作家個人としてそうした創作に喜びが見出せるかというと、僕自身は今のところはないですね。
白濱さん:
まったくもって同意見です!
いまのプロデュースという話でいえば、例えば実際に小説を書ける人がプロデュースするのと、実際には小説を書けない人がプロデュースするのとでは、180度生み出される作品は違ってきますし、それは書くのが人でもAIでも同じだと思います。
結局のところ、僕は「血の通った人間が作るもの」が好きなんです!
たとえ技術的に完璧でも、生身の人間が作っていない作品は、ふとした瞬間に興味が失せてしまう。
古い考えかもしれませんが、汗水流してがむしゃらに作られたもの。そんな「昭和・平成の魂」ともいえる、にじみ出る努力が感じられるものにこそ、僕は魅力を感じてしまいます。
田丸さん: とても分かります!
にじみ出るものといえば、小説には「文体」があります。以前、詩人の谷川俊太郎さんとお話しさせていただいた際に、「文体とはその人の人間性」というようなお話をしてくださって、ハッとしました。
僕自身も、「どう書くか」はあるよなぁと思っています。ショートショートではアイデアがキモになるわけではありますが、仮にAさんとBさんが同じアイデアで作品を書いたとしても言葉のチョイスは異なるでしょうし、ある種のクセも出るはずです。その点、これからの時代、クセは消したほうがいいものではなく、あったほうがいいものであり、より愛されるようになっていくんじゃないかなと思っています。
白濱さん:
個人のアイデンティティにも繋がりますよね。
あと日本人特有というもので言語の観点でいえば、僕たちの使う日本語にはまだ幾らか猶予があるんじゃないかと思っています。
英語圏ではイントネーションやニュアンスもほぼ完璧に近いレベルまでAIが到達している感はありますが、こと日本語においては違和感を覚えます。
これは日本語特有の行間を読む文化や、繊細なイントネーションの機微を、AIがまだ学習しきれていないのではないかと。
そしてそれが日本人がまだ戦えるある種の武器になるのではないかとも思っています。
もちろん、今の時点の話であって、来年には変わっているのかも知れませんが…。
田丸さん: 僕もそう思います!技術はどんどん進歩していきますから、僕たちも来年にはまたAIの使い方や考え方、捉え方が変わっている可能性も十分にあり得ますよね。今日の時点での状況が最終地点だと決めつけず、柔軟に変化していくことも大切だと思っています。
その上で、やっぱり「あなただから産み出せるものが絶対にあるはずだから、それを手放して欲しくない」と思います。
田丸さん: まず、「読書感想文」という言葉からの言葉遊びがお見事です。「陸上=動」と「読書=静」が融合した骨太な作品で、さらに家族の物語、主人公の過去の描かれ方にも心をつかまれました。
「全日本読書完走文大会」「リーディングランナー」といった作中の用語も魅力的で、ラストの回収まで含め、なんて器の大きい作品だろうと思った一作でした。
白濱さん: 親子の話が素晴らしかった!言葉遊びはもちろん、フィクションなんだけど、本当にこんな大会が存在するのではないかと思わせるリアリティさもありましたし、だからこそ作品に登場する親子の話にむちゃくちゃ温もりを感じて心にグッときました。
白濱さん: 僕、むちゃくちゃ好きな作品です!
僕もジムに通っているので分かるんですけど、ジムに行くと始めたばかりの女の子にフォームを教えたがるおじさんってリアルにいるんですよ。
僕もジムでそういう光景を見ると、「あんまり口出しされるのって嫌だろうな」って頭の中でグルグル考えちゃったりするので。ジムに一人、教え魔ハンターが欲しいですね(笑)。
田丸さん: 描写がとにかくリアルで、ゴルフの練習場などの具体例の説得力が凄い。風刺的な方向で一貫させることもできる中で、それだけで終わらず、さらにもう一歩踏み込んで深いところまで描かれた点が素晴らしかったです。
田丸さん: 詩にも近い幻想的な文体が独特でした。花火が打ちあがっているのに、逆に静けささえ感じるという不思議な魅力がありますね。記憶や感情を扱った物語はショートショートではよくあって、本作は構成も王道の型なので、普通は既視感を覚えてしまいそうなところです。が、オリジナリティーをたしかに感じる。文体の勝利ですね。「ここはどうなっているのだろう?」と感じた箇所などを含めて、すべてが夏の曖昧さのなかに溶け込んでいるような感覚になりました。
白濱さん: 昔話にあるような「戒め」さえ感じる作品でした。「安易に大切なものを人に渡してはいけない」というメッセージが、重みを持って迫ってくる感覚がありました。
白濱さん: 「間取りを盗む」という言葉遊びから、ここまで物語を膨らませられる想像力が凄いですね。それに、「部屋の間取りから一部屋なくなったらマジでキツい」という、生身の人間だからこそ理解できる人間味あふれる表現方法も面白かった。
田丸さん: ハードボイルド調の筆致、そして間を盗むという大胆なアイデアが、強烈に印象に残りました。本作のアイデア、本当に痺れます!
田丸さん:監視社会ものというクラシックなテーマに、「見逃し配信」という現代的な観点から挑まれていた点がユニークでした。「もしそうなったらどんなことが起こるのか」というディティールも想像が行き届いているように感じ、リアリティを覚えました。
白濱さん: タイトルに込められた二重の意味が深いですよね。配信の見逃しだけじゃなく、家族との大切な瞬間を「見逃す」ことにも繋がりますし。僕も自分の犬と過ごす一分一秒の瞬間を見逃してないかなって、現実に引き戻される感覚がありました。
白濱さん: 彼氏の顔が浮気心の数だけ増えるという描写が面白かったです。
その半面、見えすぎても困る事、知らない方が良かったという事も多分にあるとも感じました。頭の中で考えている事とか、人に隠すべきところは、見えていない方が良いよなとか、いろいろ思うところがありましたね。
タイトルもそうですが、「縁切り神社」とか「草薙」という名字とか、出てくるもののチョイスが日本人ならではで、翻訳できない面白さもあると感じました。
田丸さん: 顔が増えるというアイデア自体は珍しくないのですが、その理由付けや丁寧な描写が秀逸でした。顔が増えたまま生活しているというありえない設定なのに、まるで見てきた景色のように描写に説得力があって。笑えるシーンも多く、読む人を選ばない非常にレベルの高い作品だと思いました。
白濱さん: 「本当に小学生が書いたの!?」という驚きと共に未来を感じる作品でした。
それこそ田丸さんにいただいたビール*のラベルに載っていてもおかしくない(笑)!
*ショートショート作家・田丸氏の小説が刻まれた、松山のDD4D BREWINGが生み出すクラフトビールのこと
田丸さん: 表彰式でお会いしましたが、ちゃんと小学生の方でしたよ(笑)。
無駄なく的確。水と火という対極の組み合わせがシンプルかつ大胆でした。水たまりに花火を落とすというのにもワクワクしますね。ラストのブラックユーモアの切れ味も、余計なものを削ぎ落とした原稿用紙1枚ほどの文章量だからこそ際立っています。ぜひますます羽ばたいていって欲しいですね!
白濱さん: 年々応募数も増加して、それぞれの物語がより身近に出せるようになっていると感じます。こんな時代だからこそ、あなたの血の通った作品を読ませて欲しいです!
ご応募お待ちしています!
田丸さん: AIが進歩したことで、創作や応募のハードルが下がったのは事実で、使用すること自体はなんら否定されるものではないと思っています。ただ、上手に付き合っていって欲しい。
そして最終的に、あなた自身の中から生み出されたあなたの言葉、作品と出会えたなら、僕個人としてもとても幸せに感じますし、ぜひ坊っちゃん文学賞にお寄せいただきたいと思います。
1987年、愛媛県松山市生まれ。松山東高、東京大学工学部卒、同大学院工学系研究科修了。2011年に作家デビュー。12年、樹立社ショートショートコンテストで「海酒」が最優秀賞受賞。「海酒」は、ピース・又吉直樹氏主演により短編映画化され、カンヌ国際映画祭などで上映された。坊っちゃん文学賞などにおいて審査員長を務め、また、2013年から全国各地でショートショートの書き方講座を開催するなど、現代ショートショートの旗手として幅広く活動している。書き方講座の内容は、2020年度から小学4年生の国語教科書(教育出版)に採用。2021年度からは中学1年生の国語教科書(教育出版)に小説作品「桜蝶」が掲載。17年には400字作品の投稿サイト「ショートショートガーデン」を立ち上げ、さらなる普及に努めている。著書に『海色の壜』『おとぎカンパニー』シリーズなど多数。メディア出演に「情熱大陸」「SWITCHインタビュー達人達」など多数。 <田丸雅智 公式サイト>
1993年8月4日生まれ、愛媛県松山市出身。 2012年11月、GENERATIONS from EXILE TRIBE パフォーマーとしてメジャーデビュー。 2014年4月にEXILE新パフォーマーに決定し、EXILEに加入。GENERATIONSのリーダーも務め、 EXILE/PKCZRと兼任しながら活動している。 2023年2月にはフィリピン観光大使に就任。 また、俳優としての主な出演作にはドラマ「シュガーレス」、「GTO」、「小説王」、「M 愛すべき人がいて」、映画「ひるなかの流星」、「コンフィデンスマンJP プリンセス編」、「10万分の1」などにも出演。 さらにDJ(楽曲制作)としても活動し、マルチに活動の場を拡げている。