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第21回 坊っちゃん文学賞

【坊っちゃん文学賞特別対談・前半】田丸雅智さん+白濱亜嵐さん「ショートショートの頂を高め、裾野を広げる」

坊っちゃん文学賞恒例! 審査員長・田丸雅智さんとアンバサダー・白濱亜嵐さんの対談を今年も実施しました。今回は、坊っちゃん文学賞が第20回を迎えたということで、前半では、ご自身の「アニバーサリー(周年)」にまつわるお話を語っていただいています。そして後半は、6月に発売された坊っちゃん文学賞の過去受賞者等による新作ショートショート集(電子書籍)のなかから作品をピックアップして感想を交わしていただきました。まずは前半からどうぞ!

*本対談は、Zoomを使用してオンラインで実施しています。

いつの間にか夢を与えられる側に

白濱:GENERATIONSは今年でちょうどデビュー10周年です。

田丸:おめでとうございます!

白濱:ありがとうございます。振り返ってみると本当にここまであっという間でした。先輩のEXILEがデビュー10周年を迎えたのが2011年で、僕はそのときバックダンサーを務めていて、「10周年ってすごい!」「モンスターグループだ!」って高校生ながら驚いていたんですけど、自分がなってみるとまだまだ中堅だなって感覚ですね。

田丸:ははあ。

白濱:今年は10th ANNIVERSARY YEARと称してツアーを行っていて、デビュー10年の歴史やストーリーに焦点を当てたステージを展開しています。

田丸:素敵です。あっという間に感じたとはいえ10年という月日は長いですよね?

白濱:ええ。自分でも10年続けてこられたことは純粋にすごいと思います。というのも、昨今のダンス&ボーカルグループってなかなか10年続かないですから。しかも、僕たちはメンバーも変わってないし活動休止期間もまったくない。相当稀有な存在です。

田丸:この10年で表現の幅やできることの幅は変わりましたか?

白濱:できることが増えているのは実感します。作詞・作曲もそうですし、俳優としてもステップアップさせてもらっていて。仕事仲間との関係性も変わりましたね。右も左もわからなかった昔と違って、いまは現場のスタッフさんとも仲間のような感覚で。「うぃーす!」って(笑)。

田丸:(笑)。

白濱:そして、いつの間にか後輩だらけになりました。最近のダンス&ボーカルグループの子たちに、「GENERATIONSのライブをきっかけにアーティストを目指しました」って言われることがすごく多くて。時代は回り巡っている。僕たちにとってのEXILEが彼らにとっては僕たちなんだなって感慨深いです。いつの間にか夢を与えられる側になっていたんですね。そのぶん、現場でベテラン扱いされることも多くなってきたので、嬉しくもありちょっと複雑なところもありますけど(笑)。

田丸:(笑)。僕の場合、単著を出せたのが2014年なんですが、商業雑誌に初めて作品が掲載されたのは2011年なので、プロデビューという意味では10年以上経っています。周年を機に特別なにかをしたわけではないですけど、10年経ったときには感慨深いものがありましたね。はじめの頃は、ショートショートというジャンルでは作家として食べられない、という否定的な声しかなかったですから。そのなかでなんとか仕事として確立することができましたし、そこから生まれたご縁によってさらに活動が広がっている。今日のように亜嵐さんと対談させてもらったり、亜嵐さんの先輩の橘ケンチさんとたちばな書店でコラボさせてもらったり……もちろん、書き手としても、年を重ねるごとに書ける範囲、想像できる領域というのはいまだに広がり続けています。

白濱:なるほど。

田丸:そして、2013年からはじめた書き方講座は今年でちょうど10年目を迎えました。受講者数自体はもちろん年々増えていますし、先ほど亜嵐さんがおっしゃったのと同じく、書き方講座の受講をきっかけにプロになる方が出てきたり、創作を続けてくださっている方も増えていて。とても感慨深いですね。昨年か一昨年、松山での朗読イベントの際、僕の作品を朗読してくださった女子高生の方が、実は僕が10年前に初めて開いた講座を受けてくれた子だったんです。当時、小学生だったそうで。そういう再会は本当にありがたいですね。

白濱:嬉しいですよね。それに作家さんの場合、デビューの年齢が人それぞれだから面白い。いま、田丸さんと同い年の新人が出てきたりするわけじゃないですか。ダンサーの場合は、新人というとやっぱり10代の子なので。30代の新人ダンサーはなかなかいない(笑)。

田丸:たしかに!

白濱:もちろん遅咲きの方もいるんですけど、新人とはまたちょっと違うから。作家さんの場合、いくつになっても新たな才能としてデビューできるでしょう。一生チャンスありますもんね。

田丸:とくにショートショートの場合は、人生経験があればあるほど書けるものも増えるように思っていますので、年齢を重ねるほどむしろチャンスが増すかもしれないですね。

白濱:そうですよね。

やりたいことをやるためにはセルフプロデュースが必要

田丸:10年前にいまの自分を想像できていたかというと、僕は全然できていなかったです。当時、「ショートショート作家として食べていくんだ」という気概はあったものの、具体的なモデルケースはなかったので。本当に手探りでした。そのなかで、20代半ばでショートショート大賞を立ち上げて自分が審査員長を拝命するなんて夢にも思っていなかったですし、地元松山の坊っちゃん文学賞に関わることまでできるなんて想像もしていなかったです。亜嵐さんの場合は、デビューした頃いまの自分の姿はイメージできていましたか?

白濱:どうでしょうね……ただ、ここまですごく順調に歩めていると思います。掲げた夢のほとんどを叶えることができましたし、叶うのも早かった。GENERATIONSがドームツアーやったのも僕が25歳のときなので、いまの後輩グループたちに比べると相当早いですから。

田丸:この10年のなかで不安と戦う時期はありましたか? デビュー直後とかは特にそうなりそうですけど。

白濱:当時は先輩たちの背中をがむしゃらに追いかけていたので不安は感じなかったです。あの頃は勢いで動いていたというか……LDHの社風的にも昭和の後半の名残があって、気合とか魂とか(笑)。僕たちがそれを感じた最後の世代です。時代は変わっていっていますね。

田丸:10年やっていると時代の流れとも向き合わざるをえないですよね。表現についても、昔よりいっそう配慮するようになったように思います。

白濱:わかります。

田丸:ただ、だからこそできることもあると思っていて。

白濱:世の中が窮屈になった部分があるからこそ、どういう表現をするべきなのかをより真剣に考えるようになりましたよね。

田丸:ええ。思考停止しないように。そうしないと長く続けられないですよね。亜嵐さんご自身もそうですけど、先輩グループも変化に晒され続けながらもずっとエンタメ業界の最前線にいらっしゃるわけじゃないですか。亜嵐さんの目からみて先輩たちの姿はどうですか?

白濱:みなさん、ダンスや歌以外のところで持ち味を見つけはじめていますね。TETSUYAさんはコーヒー屋さんを開いていたり、ケンチさんは書店や日本酒を作ったり……本業以外のことを身につけて活躍する先輩たちの姿を見ると刺激をもらえます。自分もちゃんと考えなきゃって。

田丸:そうすると、亜嵐さんのこれからの目標は?

白濱:漠然としていますけど、エンターテインメントの第一線で活躍し続けたいという目標は常に持っています。とくに、自分のセカンドキャリアとしては、作曲家や作詞家としてのポジションを確立したい。ダンサーなので、踊れなくなることへの危機感は常に頭のどこかにあるわけです。もしアキレス腱を切ってしまったら一年くらいライブできないですし。そうなったときにどうご飯を食べていくかは考えておかないと。

田丸:亜嵐さんでさえ。

白濱:あと、次の大きな挑戦としては、世界を踊らせるようなヒットメーカーを目指したいです。最近、DJをやる機会が増えてきているんですけど、世界のダンスミュージックシーンで活躍している日本人ってほとんどいなくて。世界で戦っていけるDJを目指すためにいま、色々なクラブでDJをしたり、楽曲のリリースもどんどん動いています。最近、自分で自分をプロデュースするみたいなモードに入りつつありますね。自分自身が白濱亜嵐の一番のプロデューサーだっていう感覚に。お芝居も含めてソロの仕事はとくにそうです。

田丸:とても共感します。そもそも作家の場合は、作品ごとに編集者はいてもトータルで見てくれるプロデューサー的な存在はいないので、セルフプロデュースをする気概がないとなにも進んでいきません。誰かに頼りたいという願望は心の底にはずっとあるわけですけど(笑)、実際には自分自身で一歩引いた目線からも考えていかないといけない。僕の場合、ここから先の5年10年は、自分が書き手として成長することは大前提の上で、一人でできないことを仲間たちと一緒に取り組んでいきたいなと思っています。ショートショートを発展させ、文化として定着させるために必要なことをみんなで考えたい、考えねばと。

白濱:すごくよくわかります。プレイヤーとしてはできればセルフプロデュースなんて考えずに、やりたいことを存分にやっていきたいんですけど、それだけじゃ駄目なんですよね。ちゃんと考えて自分をプロデュースしないと。それがわかるようになっただけでも僕は成長しているのかもしれない(笑)。

田丸:セルフプロデュースについて考えることがプレイヤーとしての妥協かというと全然そうではなくて、本当にやりたいことをやるために必要な作業なんですよね。

白濱:直感的に動いた結果、それが自分のやりたいことにつながるかどうかはわからないですからね。

田丸:もちろん最後は直感も必要ですけど、できるだけ自分で頭を使ってからでないと、なかなかうまくいかない。

白濱:むやみやたらにボールを投げるだけじゃなくて、ちゃんとストライクを狙わないと。どういう配球でストライクを狙うかまで考える。

田丸:全部ストレートを投げたくても、それをやってしまうとガンガン打たれてお話にならないですからね。カーブを投げることは妥協でもなんでもない。球種が増えたら難しくもありますけど楽しいですよね。

白濱:そうそう。

<【後編】はこちらから>

(2023.7.18 )

田丸 雅智

1987年、愛媛県生まれ。東京大学工学部卒、同大学院工学系研究科修了。2011年、『物語のルミナリエ』に「桜」が掲載され作家デビュー。12年、樹立社ショートショートコンテストで「海酒」が最優秀賞受賞。「海酒」は、ピース・又吉直樹氏主演により短編映画化され、カンヌ国際映画祭などで上映された。坊っちゃん文学賞などにおいて審査員長を務め、また、全国各地でショートショートの書き方講座を開催するなど、現代ショートショートの旗手として幅広く活動している。書き方講座の内容は、2020年度から小学4年生の国語教科書(教育出版)に採用。2021年度からは中学1年生の国語教科書(教育出版)に小説作品が掲載。17年には400字作品の投稿サイト「ショートショートガーデン」を立ち上げ、さらなる普及に努めている。著書に『海色の壜』『おとぎカンパニー』など多数。メディア出演に「情熱大陸」「SWITCHインタビュー達人達」など多数。 <田丸雅智 公式サイト>


白濱 亜嵐

1993年8月4日生まれ、愛媛県松山市出身。2012年11月、GENERATIONS from EXILE TRIBE パフォーマーとしてメジャーデビュー。2014年4月にEXILE新パフォーマーに決定し、EXILEに加入。GENERATIONSのリーダーも務め、EXILE/PKCZRと兼任しながら活動している。2023年2月にはフィリピン観光大使に就任。また、俳優としての主な出演作にはドラマ「シュガーレス」、「GTO」、「小説王」、「M 愛すべき人がいて」、映画「ひるなかの流星」、「コンフィデンスマンJP プリンセス編」、「10万分の1」などにも出演。さらにDJ(楽曲制作)としても活動し、マルチに活動の場を拡げている。


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